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今まで使ってきたイヤホン(ビクターのどんぐりみたいなウッドコーンモデル。FX500?700?800?型番を忘れてしまったのだが10000円位のやつ)が断線したので予備にしまっていたPanasonic RP-HJE70を使っていたのだが、音が良くない。ビクターのどんぐり君の方が後発の製品でよく研究して出しているからかもしれないが、どんぐり君は癖もあったけど、聴いてて楽しい音で、音質的にも「まぁ、1万のイヤホンだからしょうがないよね」と割り切って使える音質だった。RP-HJE70はその閾値を下回っていて、ちょっと不満に感じたので、新しいイヤホンを探すことにした。 要求スペックは ・カナル型 ・耳掛けは煩わしいので耳掛けでないこと (シュレ掛けのようなコードを耳にかけるタイプもなし) ・余計なリモコンとかがついていないこと ・どんぐり君より音質は落としたくないので1万から2万くらいの価格。 (1万以下でもどんぐり君と同等の音質のものはあるのだろうが、探す手間を考えると効率が良くないので) ・ビクターのどんぐりシリーズ以外 (似たようなの買ってもつまらないので) ・ケーブル交換をしない予定なのでケーブル着脱式でないもの (ケーブル着脱式は断線したらケーブル交換できるが、今度は接続部分の耐久性はどうか?と言う不安が出てくる。接続部が頑丈なら問題ないのだが。) ・ケーブルは左右等長のもの。 (RP-HJE70はケーブルが左右非等長なのだが、片方だけ長いと絡まりやすく、ほどくのも面倒なため) と、この条件で探索した結果・・・私はエティモーティックのER4SRというイヤホンを発見した。 ER4Sと言えば高解像の代名詞的なイヤホンで、ER4SRはそれの後継機種と言うことらしい。ここが重要なのだがデザインが格好良くなっている。私はバランスドアーマチャー型を使ったことがないし、面白そうだからこれを買うことにした。 価格とケーブル着脱式なのは要求から外れるが要求スペックを全て満たすイヤホンではデノンのAH-C820が面白そうかと思ったのだが、結局ER4SRになった。「いわゆる高解像系のイヤホンってどんなもんなの?」と言うのを体験してみたくなったのだ。 ER4SR 比較機種(HD650,RP-HJE70) 比較はHD650,RP-HJE70と行いました。手元にあると言う理由で。 HD650 HD650は私がケーブル制作時の部品の音質チェックに使っているものです。完璧なヘッドホンではないけれど、シンプルな構造で頑丈で壊れないし、保守部品も簡単に手に入るので道具としての完成度は高い。またケーブル交換で遊べるのも良い。音質は音像の輪郭をクッキリ描写するタイプではないので、このあたりが人によって好ましくないと感じる理由なのではないだろうか。特に標準付属ケーブルは音が相当にぼやけるので音の輪郭までぼやけてしまう。そういう音をスピーカー間の間隔が狭いヘッドホンで再生すると肥大化した音像イメージが頭の中に広がると言うことになります。それは定位感の低下、イメージングの低下、そして頭内定位感や閉塞感の増大を意味します。HD650のような音調はスピーカーならたぶん問題ないのだろうけど、ヘッドホンだと音像がクッキリしていてピンポイントで小さな音像を結んで、かつ奥行き感のある音の方が頭内定位感や閉塞感も少ないので好ましいと思うし、ヘッドホンだとそれを好む人が多いと思いますね。 ちなみに上に書いた問題はケーブル交換でほとんど解消されますが、それでもクリアではあるけど音の輪郭を強調したような音ではないですね。このあたりは人によっては「もっとはっきりした音の方が良い」と思うかもしれないし人それぞれだと思いますが、個人的には不満はなく、定位やイメージングは問題ないレベルに達していると判断しています。今はどちらかと言うと定位や解像度ではなく音楽的な表現力をいかに上げるかと言ったところに注力してますね。 HD650(標準ケーブル)に関してもう少し加筆しておくと、音の輪郭がぼやけることを除けば、変な癖もないし、かなり素直な音。たまに音がぼやけることをあげつらって「HD650は癖の塊!低音ぼわぼわ、音がぼけぼけのクソホン!」とか言われるけど、それは一理あるし、言いたい気持ちもわかる。だけど音の輪郭がぼやけること以外に目を向けたら優秀な特性を持ったヘッドホンだと分かるのではないだろうか?・・・・・・・・・・と言いたいところだけど、私もHD650のケーブルを交換するまで「理性的に判断すれば良い音だけど、もやもやしてるしどこか納得できない音なんだよな。測定データはすばらしく良いけど、曲も選ぶし、これで万能型のヘッドホンなんてよく言われたもんだなw」なんて思っていました。ところがケーブルを交換すると巷に出回っている測定データからイメージする通りの音(もしくはそれに近い音)が出るので、そこで初めてHD650の素性の良さを実感したと言うところです。HD650(標準ケーブル)が測定結果からイメージするような音が出ないのは、測定に表れていない要素も人間は聴き分けるからでしょう。そういう意味では基本的には良くできてるんだけど、(ケーブル以外でも)細かいところに手を入れれば音質を改善できる余地が大いにあるヘッドホンだと感じています。たぶんだけど、基本設計はものすごく良い。とは言っても恐らく部品レベルで1つ1つ音質を検証して作り上げられたヘッドホンでもないだろう。もしそうならこの程度の音のわけがない。優秀ではあるが完璧なヘッドホンではないね。 最近はHD650の後継のHD660Sなるものが出たようで、HD660Sは音がぼやけるとかそういう話は聞かないので値段がこなれてきたら買ってみようかな。HD650と絶対的な音質差があると言う感じでもなさそうなのだがケーブルも同じもの使えるし。部品が共通でそこから改良を積み重ね積み重ねと言うのは素晴らしいと思う。 HD650 RP-HJE70 高域が伸びない上に割れるような感じがするのと、音の細部が潰れてのっぺりした感じが不満。低音はすごく出る。解像度的にはHD650(標準ケーブル)の5段ほど下。基本的には予備として保管してある。 RP-HJE70 再生機器(PMA-60, RME HDSPe AIO) 再生機器はDENON PMA-60かRME HDSPe AIO(サウンドカード)のヘッドホン端子を利用しました。 今ある機械でヘッドホン端子を持っているのはPMA-60かサウンドカードかノートパソコンかDAPくらいしかないからです。DAPだとHD650が全く駆動できないので、必然的にPMA-60かHDSPe AIOと言うことになります。PMA-60はUSB接続で再生しました。電源ケーブルは標準の付属のもの、インシュレーターもオーディオボードも使っていません。いわゆるポン置きです。というのはそれやるとヘッドホンの音質差が簡単にひっくり返るくらい音が変わってしまうので、一般的な再生環境とは言えないし、参考にならなくなるからです。 ただし、USBケーブルだけはFURUTECH ADLのFormula2にしました。理由は後述。 PMA-60 PMA-60のヘッドホンアンプ部については情報が少ないので少し書いておくと、解像度はHDSPe AIOのヘッドホン端子よりも2段程上、奥行きではPMA-60の方が若干上(HDSPe AIOより30cmくらい広がる感じ)。音調は肉厚だが若干暗めのデノントーンと言った感じ。高音キラキラで明るくハキハキと言う感じではない。だけど音が硬めでクッキリしている。対してHDSPe AIOは何もかもがごく普通と言った感じ。音色の豊かさではHDSPe AIOに分があるのだが、絶対的に劣っている感じでもないし、PMA-60の方が解像度と奥行きは上なので、音色に関しては好みの差で済ませられる範囲だろう。全体的に見てHDSPe AIOよりも若干上の音に感じた。10年くらい前に出ていた8万くらいのDAC付きヘッドホンアンプよりも若干良い音が出てるので、時代の進化があるとはいえ、スピーカーメインでサブヘッドホンと言う使い方なら十分なパフォーマンスがあると思う。 もちろんDA-310USBの方がもっと音は良いのだろうが、個人的にはヘッドホンしか再生できない機械にお金は払いたくないという気持ちになってしまう。しかもDA-310USBはACアダプターだからケーブル遊びができないじゃないか!良い電源ケーブル挿せばDA-310USBも超えちゃうだろう。でも気に入らないのは良い電源ケーブル挿してもクリアにはなるけど、ただクリアなだけで柔らかさやしなやかさに欠けるとこ。上ではHDSPe AIOと比べても音色の悪さはさほど気にならないと書いたが、電源ケーブルで解像度はかなり上がってるから音色が悪いのが悪目立ちして気になってしまう。というより良い電源ケーブル挿しても音色が思ったように良くならない印象。たぶんどこかに音色を汚すボトルネックが存在するんだろう。PMA-60のヘッドホンアンプ部は基本的に高解像とクリアさ、そして定位の良さで高音質と感じさせるタイプの音で音色の表現は苦手傾向と言う感じ。このあたりはプリメインアンプ部と共通している傾向。それでも4万ちょっとのオールインワンでこの音ならコストパフォーマンスはかなり高い。 FURUTECH ADL Formula 2 USB-B 3.6m 上で電源ケーブルで音色があまり向上しないと書いたけどUSBケーブルだとものすごく変わる印象。FURUTECH ADL Formula 2を入れるとPMA-60の音色はかなり改善する。少なくともRME HDSPe AIOと遜色ないレベルになっている。PMA-60の付属USBケーブルはクリアだけど音が痩せて刺々しい印象だが、FURUTECH ADL Formula 2はPMA-60の付属USBケーブルよりもさらにクリアになっているのに、柔らかさとしなやかさを伴った音調になっている。歪感が減って音色が正統に良くなっている印象。解像度はPMA-60の付属USBケーブルの+3段上、奥行きは+40p程拡大する感じ。PMA-60はコストパフフォーマンス良いと書いたけどFormula 2はそれ以上にコストパフォーマンスが良い。もっともケーブルだけでは音は出せないがね。 「PMA-60+Formula 2」だとHDSPe AIOのヘッドホン端子と比べて、解像度は+5段程上で奥行きはHDSPe AIOよりさらに+70cmくらい広がる感じ。さらに音色は互角くらいには上がっているので、HDSPe AIOより確実に良い音と言って良い。ただ「PMA-60+Formula 2」でも音色が抑圧された感じが若干残ってしまってはいる。開放感がないっていうのかな。これが無ければPMA-60は手放しで褒められるんだけどね。 一般的な再生環境という意味ではすべて付属品レベルが良いと思うのだが、それだとPMA-60の音色が不満だったのでFURUTECH ADL Formula 2を付けておくことにした。FURUTECH ADL Formula 2は3.6mでも6000円ちょっとで買える安価なケーブルなので、一般的な環境の範疇に入れても良いだろう。FURUTECH ADL Formula 2は音色が良くなるのでお勧め。 FURUTECH ADL Formula 2 ER4SRの音 さて、ER4SRの音。一言で言うと解像度は圧倒的。HD650(標準ケーブル)と比べると解像度が数段上とかそんなもんじゃなくて+75〜76段上とかそんな感じ。数字がインフレしすぎててわけわからんかもしれないけど、私基準ではそんな感じ。ビクターのどんぐり君がHD650(標準ケーブル)の2段下みたいな解像度だったから、どんぐり君とHD650(標準ケーブル)の解像度の差はほぼ無視できちゃうくらいの差がある。私が使ったことがある中では一番高解像だったATH-W5000はHD650(標準ケーブル)の4〜5段上と言った感じだったから、この解像度は確かに群を抜いてる。とてつもなく、驚異的なレベルで圧倒している。 HD650のケーブルを交換したものと比較しても、ER4SRの解像度を上回ることはできなかった。このケーブルは仕事に使っているHD650用に制作したもので、識別のため「MUGEN-HPC540M(Mはモディファイの意味)」と名称を付けている。MUGEN-HPC540Mケーブルは最近制作したもの。市販のケーブルに魔法をかけて高音質化したものなのだが、元が市販ケーブルなので性能には限界がある。だけど解像度的には+68段ほど上乗せできるので簡単にER4SRを圧倒できると思っていたが、実際に比べてみると微妙に負けてしまっている。音場は勝ってるけど。ER4SRをケーブルで圧倒するには完全オリジナルで制作するしか無さそうだが、そんなことしても硬くて扱いにくいケーブルになるのは目に見えてるので、現実的にはMUGEN-HPC540Mくらいの音質がヘッドホン用のケーブルとしては限度だろう。MUGEN-HPC540Mをもう少し改良すれば互角くらいに持っていけるかもしれんけど。あとMUGEN-HPC540Mはせっかく作ったんだけど音色が気に入らなくて不満。音が薄いしエネルギー感が不足している。これは失敗作かな。失敗したとしても、貴重な経験にはなるから私にとっては大切なケーブルには違いないが。。。このあたりは次作るときは改善したい。 またPMA-60に電源ケーブルを追加して比べるなら、「HD650(標準ケーブル)+MUGEN-PWC013M」との比較だと「HD650(標準ケーブル)+MUGEN-PWC013M」が「ER4SR+標準電源ケーブル」を解像度で若干ながら上回ることができた。MUGEN-PWC013Mは解像度的には+79段、奥行きで+15mほど上乗せできるので当たり前と言うか、「HD650(標準ケーブル)+MUGEN-PWC013M」と比べて僅かに劣っていたからER4SRの解像度をHD650(標準ケーブル)の+75〜76段上と評価しただけなんだけど。「HD650(MUGEN-HPC540Mケーブル)+MUGEN-PWC013M」でようやくER4SRの音が潰れて聴こえて解像度で圧倒していると言えるレベルになる。数字がインフレして見えるのは、例えば「3万のヘッドホンは1万のヘッドホン2段上の音質、その倍の6万のヘッドホンは3万のヘッドホンの2段上の音質。」みたいな小さな音質差を基準にして数段上みたいな評価の仕方をすると本当に音質を引き上げていったときにインフレした数字を使わざるをえなくなってしまう。インフレした数字使わんといかんER4SRは本当の意味ですごいんだろうけどね。 解像度以外の話をすると、ER4SRの音は高域はやや硬質なのだが、それ以外の帯域はカラーレーションがほとんど感じられない。音源を変えた時の音色の変化量が大きく、音源に応じて音の印象が良く変わる。ただし高域に関しては硬い感じが抜けずにピアノの高音が細くて硬い感じに鳴る。そういう意味では完全なノンカラーレーションではないが、全体的にはHD650(標準ケーブル)よりも優秀だし、概ね癖の少ないニュートラルと言って良いだろう。音色の表現力や音楽性は全体的にはHD650(標準ケーブル)より高い。ただしER4SRは高域がちょっと不自然で、高域の癖の無さとか自然さいう意味ではHD650(標準ケーブル)の方が良い。カラーレーションの少なさでは高域はHD650(標準ケーブル)、中低音域はER4SRに軍配が上がる感じだろうか。ER4SRは高域の若干硬い感じがどうしてもついて回る。この高域の硬さがほぐれると、表現力が上がり、もっと音楽的で心地の良い音になると思う。 Fバランスに関してはスペックではDFカーブに近い周波数特性で、聴感上も概ねフラットに聴こえる。ただし、ちゃんと深く挿さないと1000Hz以上に山が出来て、ボーカルが明るめでかつ張り出した感じで鳴ります(このあたりは個人差があるかもしれないが)。3段フランジ(大)を使った方が深く挿さずに密閉度が稼げるので、以前は3段フランジ(大)を好んで使っていましたが、挿す深さでFバランスが変わると気づいてから3段フランジ(小)を使うようになりました。密閉度が稼げて低音が出るだけでなく聴感上フラットに聴こえるのがメーカーの意図した音と言うことでしょうから。。。それにしても難儀なイヤホンだ。 低音再生能力は密閉度を完璧にするとHD650(標準ケーブル)より量感はないけど不足することはまずありません。最低域まできっちり伸びるのはさすがカナル型。しっかり装着できていればエネルギー感もHD650(標準ケーブル)やAH-C820(後日購入したやつ)と比べてもまず負けてない。高域に関してはスペック上は伸びは若干足りないのかもしれないが、個人的には十分許容範囲。精度が高いので気にならなかった。 ER4SRは奥行感もかなり優秀。響きの豊かな楽器やエコーが掛かっているボーカルなんかは3.7m〜7.5mくらい先まで広がっていく。ただこの広がりは音源の音楽情報から前後感を出しているだけなので基本音源依存。だから音源によっては普通に頭内定位になる。なんでもかんでも頭外定位するわけではない(知ってるだろうけど念のため)。でも奥行き7.5mと言うとHD650(標準ケーブル)だと全く実現できないレベル。HD650(標準ケーブル)だと奥行き1.5mくらいがせいぜいだ(「PMA-60+Formula 2」で再生)。奥行き7.5mをケーブルの支援なしに実現してるのはすごいと思う。 装着方法について 上記の音質はきちんと装着できた時の音です。きちんと装着できてない場合は解像度がただ高いだけでそれ以外は全部駄目な一点突破型イヤホンになり下がります。このイヤホンの一番の問題はきちんと装着できているかいないかで音質が天と地ほど違うことでしょうか。 この記事は正しく装着できてから音の印象がからりと変わったので再評価したもので 以前の記事を要約すると ・解像度はHD650(標準ケーブル)の+18〜19段程上。(きちんと装着できていなくても)解像度は間違いなく価格を超越したレベルにある。 ・音色の表現力(音色の微妙な違いや変化を再現する能力)は残念ながら価格分を下回っている。音色の鳴らし分け(音源を変えた時の音色の変化量で判定)では手元にあるヘッドホンではATH-AD700(1.3万円くらい)と互角レベルだった。さらにエネルギー感の無さが相まって音楽性が殆ど感じられなくなっている。ハッキリ言えばATH-AD700以下の音楽性。まるで音楽をただの音に変換して出力してるかのようだ。どんぐり君とER4SRどっち取る?と聞かれたら、ちょっと迷ってどんぐり君取るくらい音楽性がない。 ・奥行きは価格相応。奥行き40〜90cmと言ったところ。2〜3万のヘッドホンだとだいたいこんな感じ。ATH-AD700よりは良いがHD650(標準ケーブル)には劣る。(さらに付け加えるとAH-C820とどっこいレベル) ・値段分の音かどうか評価するのが難しい機種。「高解像」がこのイヤホンの売りなのだが、解像度重視の人にとっては価格以上のパフォーマンスを持ったイヤホンに思えるだろう(これより値段が高いくせにこれより解像度が低いヘッドホンごろごろあるからね、そう思えるのも仕方ない)。だけど音色重視、音楽性重視の人が評価すると「これは値段分の音は出てないよ」となる。評価軸を変えると評価が180度変わってしまうのでランク付け的な評価は難しい。あえてランク付けするなら間を取って「値段なりの音」とするのがいちばん公正な気がする。 ※(価格相応かどうかって書いていますが、私はER4SRを2.5万円で購入しています。) と評価していました。 装着が良くないと解像度も奥行きも悪くなるんだけど、特に音色が非常に悪くなるのが問題で、音色の表現力(音色の微妙な違いや変化を再現する能力)が良くないと、楽器の音色や声色の微妙な変化や違い、またはニュアンスを再現できないため、感情表現や場の雰囲気と言ったものの再現ができなくなってしまう。そもそも音色の再現性が悪くて感情表現ができないのに音楽的な音なんてまず鳴るはずがない。そう考えると音色の悪さが音楽性の悪さに直結するのは当然の帰結だと思う。大事なのは微小な音色変化に対する追従性で、これが悪いと音色の微小変化が再現されないので表現力がガタ落ちになり、音楽のエッセンスがごっそり抜け落ちてつまらない音になってしまう。オーディオにおける音楽性の高さは本質的には味付けや演出で決まるものではありません。 ER4SRはきちんと装着できていない状態では、音色の表現力(音色の微妙な違いや変化を再現する能力)が悪く、「感情表現、熱気や激しさなど場の雰囲気、色気、温度感などの音楽的要素の表現はかなり苦手で、高解像だけど生命感に欠けるつまらない音」という評価でした。これ聴いて「つまらないって、ああ、なるほどな」と思ったのですが、同時に「ER4SRがつまらないのは単純に音色が悪いから、オーディオ的な能力に劣るからつまらないんであって、『つまらないのは原音忠実で音に味付けが無いから』とフォローするのはちょっと違うんじゃないかな?」と思っていました。 ところが、わたしの場合きちんと装着することで音色の問題、音楽性の問題、エネルギー感の問題はすべて解決しました。それでもべらぼうに音楽的だとまでは言えないし、高域の音の硬さが取れればもっと音楽的に鳴るとは思うけど、水準は超えてるし、少なくともHD650(標準ケーブル)より音楽的。音色が多彩で表現の幅が広い。またエネルギー感もHD650(標準ケーブル)やAH-C820と比べても負けません。密度感もAH-C820に全然負けてないと言うか情報密度が違い過ぎてAH-C820が薄くてスカスカに感じてしまうくらいはっきりした差がある。だからER4SRに関してはきちんと装着できていれば「つまらなく感じるかもしれませんが・・・」と言ったエクスキューズは一切いらないと思う。ER4SRの音をつまらないと評価するならHD650(標準ケーブル)やAH-C820もつまらない音と評価しないといけなくなってしまうし、最高以外全部だめみたいな評価をしてもしょうがないしね。 たぶんER4SRの音をつまらないと言っている人はきちんと装着できていない人が多いと思う。そうでなければこのイヤホンがこんなにも不当に過小評価されているはずがない。 じゃあどうやって正しく装着できてるか判断するんだよ?と言うことですが、自己流ですが私の装着法を紹介すると ・まず3段フランジですが、密閉度が稼げる限り小さい方を使ってください。これは挿す深さでも音が変わる為です。もちろん密閉度が稼げない場合は大きい3段フランジを使ってください。ウレタンイヤピースは試しに1回使っただけなので知りません。 ・次に耳に挿すわけですが、このイヤホンは少しでも隙間があると、ハウリングと言うかビブラートのような音が乗ります。たぶんだけどスピーカーユニットのドライブ力に対して振動板にかかる負荷が小さ過ぎてオーバードライブ状態になっているんだと思う。だから余計な音が音色を汚し、解像度を低下させ、空間情報も失った状態になる。つまりスピーカーユニットに適度な負荷を掛ける為にも密閉度は完璧にしておく必要があります。 ・装着は音を出しながら行います。判断のポイントは「強制ビブラート状態ではないか?」「低音は出ているか?」「フラットか?(概ねで良い)」です。この3点を実現できるよう挿入深さや角度を調整します。イヤホンから手を離したとたん強制ビブラート状態になる場合は十分な密閉度を稼げていません。イヤホンから手を離しても強制ビブラート状態にならないような深さまで挿してください。また深さだけでは十分な密閉度にならないことがあるので上下左右に振って角度も調整します。上手くいくと奥行きがグワーっと広がっていくのでわたしはそれも判断材料にしています。 ・この段階で密閉度は稼げているはずなので、最後に左右の角度を微調整します。このあたりはスピーカーの内振り 平行みたいなもので好みで合わせてください。個人的には前方に定位した音像から自然に音が放射してるように感じられるように調整するのが良いと思います。また、クリアネスが得られないと感じた場合は上下角を微調整すると解消します。 装着感について このイヤホンの欠点の一つは、きちんと装着出来れば素晴らしい音質が得られるのだが、そのスイートスポットが非常に狭く装着に手間取るところ。このあたりはイヤピースの改良で何とかならないものかと思う。そこいくとRP-HJE70のような1ドームキャップのダイナミックの方がポンと付けて低音も簡単に出るので、そういう意味ではダイナミック型のカナルの方が合理的というかお手軽であると感じた。 ちなみに着け心地に関しては最初は最悪レベルに感じられたが、慣れれば普通くらいの着け心地にはなりました。。。が、ER4SR着けた後にRP-HJE70着けるとやっぱりRP-HJE70の方が圧倒的に着け心地良いと感じますね。ER4SRの着け心地は慣れれば我慢できると言ったところでしょうか。ちなみにわたしは1時間以上は我慢できません。 以下言い訳 装着方法で音質が全然違う機種。それはER4SRに限らないんだろうけど、ここまで違うとは。以前は浅く挿しても密閉度が得られる3段フランジ(大)を使っていて(低音は十分出ていたので密閉度は問題ないと判断していた)、その時は「解像度は高いが音色の表現力や音楽性は駄目駄目、生命感のないつまらない音で正直値段分の音は出てないよ」と言う内容の記事を書いていたのだが、その記事を公開しなくてよかったと思う。危うく間違った評価を世に広めてしまうところだった。悪いものを悪いと評価するのも大事だけど、本当は良い物を悪いと評価したら作った人に申し訳ないからね。でも装着方法の違いでこんなに音が違うという内容を記事に書けたのでその点では良かったと思う。 このER4SRはきちんと装着できていればコストパフォーマンスが良いなんてものじゃない。そういったものを超越した音が出ている。音質そのものが圧倒的だ。だがこのイヤホンが完璧か?と言われたらそうは思わない。高域に僅かに固有音が乗っていてその癖が付いて回っている感じは否めないし、それが音色の色彩感や温度感、そして心地よさを減退させている。欲を言えばもっとしなやかで心地良い音であってほしい。解像度や音場、音色など音質的観点からこのイヤホンの音が限界か?と言われると、私は物理的に追求できる音質限界はまだまだ上だと思っているので、このイヤホンを完璧とか原音忠実と言う言葉で形容は出来ない。だけど、技術的でなく営業的なセールストークとしてなら原音忠実と謳っても許される音質レベルに達していると思う。 ER4SRを買って満足できるであろうユーザーは「音質で選ぶなら、ほぼすべての人にお勧めできます。」と言いたい。ただし着け心地が良くないので(私は1時間以上着けていられない)、着け心地が良いものが欲しい人や長時間の使用が想定される人は避けた方が良いだろう。
2019/01/02 執筆
2019/01/20 加筆
2019/02/28 再評価
2019/03/04 加筆
2019/03/05 公開
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